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CFSの作成原理

キャッシュフロー計算書(CFS)の作成原理

本サイトでは支払能力評価の会計情報として試算表から作成するCFSについて述べています。

そこで用いる試算表についてまず説明しましょう。

試算表はたいてい月次単位で作成するので以下では断らない限り試算表は月次試算表を指します。

試算表と本来の機能

試算表は元帳の金額を集計したものであり、元帳は会計伝票を転記したものです。

会計伝票は借方、貸方別々の科目で金額を一致させて作成します。

会計伝票は科目ごとに元帳に転記し、それからすべての科目の元帳の借方金額、貸方金額を1ヶ月分集計し、集計した金額を試算表の当該科目の借方欄と貸方欄に記入します。

会計伝票の元帳への転記が正確であれば、試算表の借方欄、貸方欄の合計額は一致します。

試算表の本来の機能は元帳を手書きで記入したいた頃、借方、貸方が一致している会計伝票が、元帳に正確に転記されたか否かを確かめことでした。

しかしパソコンで処理を行えば正確に転記されるため、試算表の本来の機能は現在では意味をなさないものとなっています。

それでも月次ベースでの損益計算書や貸借対照表の状況を概観するには便利なので、現在でも使われています。

試算表科目の正確性は科目によって異なる

試算表からCFSを作成する方法に入る前に、試算表科目の金額の正確性について触れておきます。

試算表からCFSを作成する方法では、試算表科目の借方・貸方の金額を主に利用します。試算表科目の金額の正確性は、実は科目によって異なっています。

試算表には現金・預金から始まって損益項目まで多くの試算表科目が存在します。

その試算表科目には決算時と同程度正確なものと、ほとんど正確性が期待できないものとが混在しています。

正確なものから正確でないものを順に挙げれば概ね次の通りです。

a.現金・預金は増減額とも正確であるとみなしてよい
現金・預金の処理が終了した後はたいていの場合、残高を通帳等と照合しています。
残高が通帳等と一致していれば当月処理の借方金額及び貸方金額も正確であるとみなしてよい。残高の増減差額(当月末残高-前月末残高)は当月処理の差額(借方金額-貸方金額)でもあるからです。

b.受取手形、支払手形も正確であるあるとみなしてよい
受取手形、支払手形の残高と手形記入帳とを一致させているからです。

c.貸付金や借入金も正確であると見てよい
これらの科目の相手科目は借方、貸方とも通常、正確性が確認された現金・預金だからです。

d.売掛金や買掛金の増加額は不確かで、減少額は正確であるとみなしてよい
これらの試算表科目の増加額は正確性を確保することが困難な発生額です。
減少額は概ね正確な現金・預金等の決済額です。

e.損益計算書科目は月次ベースでは通常の場合、必ずしも正確とは云えない
何故かと言えば売上や仕入等の損益計算書科目は、抽象的な概念であり多くの関係者の協力がなければ正確な金額を確定することは困難だからです。月次ベースでは多くの関係者の協力を得てまで正確性を確保することは通常行っていません。
特に損益計算書科目は、月次はもとより決算においても正確性を期すことは非常に困難です。
多くの関係者とは売上の締めには営業担当者、仕入れの締めには仕入れ担当者、給料の締めには人事担当者、在庫確認には倉庫担当者・正確な会計処理の判断には公認会計士・税理士等です。

CFSを作成する場合の試算表の完成度は上記の現金・預金、受取手形、支払手形の処理が行われていればよいです。

なぜなら決済の大部分はこれらの試算表科目に属する資産・負債を用いて行われるからです。

科目によって正確性が異なる試算表から、正確なCFSができるのかという疑問を持たれるかもしれないが、実はそれは可能です。

全体としてのキャッシュフローは試算表科目の現金・預金以外の
試算表科目から求める

図は試算表概略図です。

試算表概略図

この試算表概略図は試算表からキャッシュフローを求める説明のためのものです。

そのため実際とは異なりますが、基本的な構造は同じです。

一番上行の試算表科目、前月残高、借方金額、貸方金額、当月残高は実際の試算表と同じです。

試算表科目の列の現金・預金、諸資産(定期預金を含み、現金・預金を除く)、諸負債、資本、収益、費用は実際の試算表とは異なり大項目を示しています。

現金・預金科目は、たいていの場合複数存在し、それをまとめた金額がM、A、B、Nです。

またC、Dは現金・預金を除く試算表科目の借方金額、貸方金額の合計額です。

CFSは公式的には資金の増減とされていますが、決済を表示するものと定義すべきです。

決済額は、資金の増加額(A)および減少額(B)ではなく「増加額と減少額の差額」、つまり概略図ではA-Bです。

試算表では借方金額合計と貸方金額合計(Z)は一致しているので、AとBの差額は現金・預金を除く試算表科目の差額、(D-C)でもあります。

つまり現金・預金以外の試算表科目から、全体としてのキャッシュフローを求めることができます。

現金・預金を除く試算表科目の借方及び貸方の金額を、キャッシュフロー科目の金額に置き換えることにより、キャッシュフロー科目の金額を得ることができる蓋然性が試算表にはあります。

しかし試算表からキャッシュフローをどのようにして特定のキャッシュフロー科目の金額を求めるか、それが重要です。

次はキャッシュフロー科目の代表例として営業収入を取り上げ、なぜ試算表科目から営業収入の金額が求めることができるか、その理由を説明しましょう。

試算表科目とキャッシュフロー科目の関連付け

試算表科目の金額からキャッシュフロー科目の金額を求めるには、試算表科目をキャッシュフロー科目に置き換えることが必要です。

試算表科目の借方及び貸方にそれぞれをキャッシュフロー科目を関連付ける

 簡単な例では、試算表科目の借入金の借方金額が100、貸方金額が200であった場合、借方を「借入金の返済支出」に関連付けることで100が、貸方を「借入れによる収入」に関連付けることで200がCFSに表示されます。

一方、営業収入のように一つのキャッシュフロー科目が売上や売掛金等の複数の試算表科目から構成されている場合もあります。

逆に一つの試算表科目が複数のキャッシュフロー科目から構成されている場合もあります。

その場合は、その試算表科目の金額をキャッシュフロー科目を単位に分割します。

たとえば、仮受消費税の金額はすべてが営業収入とは限らず、償却資産を売却した場合は「営業収入」と「有形固定資産の売却による収入」の金額に分割します。

複数の試算表科目から営業収入の金額を求める

ここでは試算表から営業収入の金額を求める方法を説明しましょう。

営業収入とは、損益計算書項目の売上が決済された場合に用いるキャッシュフロー科目です。

結論的には、営業収入に属する試算表科目の貸方合計額から借方合計額を差引いて求めます。

キャッシュフロー科目に対応する試算表科目を特定する基準

営業収入に属する試算表科目としては、売上・仮受消費税、売掛金、受取手形、前受金、貸倒損失等があります。

多くの試算表科目のなかから営業収入に属する試算表科目であるか否かを特定する基準は、科目の連鎖関係の有無によります。

つまり、発生時における科目(売上)が、決済または消滅するまでに現われる科目かどうかによって、同一のキャッシュフローグ科目に含まれるのかどうかが決まります。

売掛金が存在するのは売上という試算表科目が存在するからで、受取手形や前受金も同様です。

また、売掛金や受取手形が存在するがゆえに貸倒損失は存在するので、貸倒損失も営業収入に属します。

かりに裏書手形や割引手形が存在していれば、これらの科目も営業収入に属する試算表科目とします。

裏書手形や割引手形の存在は受取手形の存在が前提ですし、受取手形の存在は売上の存在が前提だからです。

このように同一のキャッシュフ科目に属するか否かは科目の連鎖性の有無によります。

同一のキャッシュフロー科目に属する試算表を通算してキャッシュフローの金額を
算出する

営業収入の金額は、返品や値引きがなければ営業収入に属する試算表科目の貸方金額に含まれています。

しかし、貸方金額には営業収入に属する試算表科目相互間の取引が含まれているため、相互間取引の金額を除外する必要があります。

除外する金額は営業収入に属する試算表科目の借方金額です。

このことを、まず図表イを用いて説明しましょう。

図表イ

図表イの①は売上を現預金等で決済した金額です。

同様に②は売掛金を、③は受取手形を決済した金額です。

また、④は決済が先行したために前受金処理した金額です。

これに対し、⑤~⑪は営業収入に属する試算表科目の相互間取引の金額です。

たとえば、⑤は掛売上の金額であり決済金額ではありません。

そして、営業収入に属する試算表科目の借方金額⑤~⑪の斜数字は必ず貸方金額に含まれています。

このことから、営業収入に属する試算表科目の貸方金額の合計額(e+f+g+h=z)から借方金額の合計額(a+b+c+d)を差引けば決済金額(x)を求めることができます。

値引きや返品する場合もあります。

その場合を図表ロを用いて説明しましょう。

図表ロ

値引きや返品に伴い返金した場合を⑫で、売掛金を減少した場合を⑬で示します。

返金した場合は売上・仮受消費税及び現預金等が減少します。

値引きや返品時に、決済が未だ行われていない場合は売掛金を減少します。

この場合の営業収入の金額は現預金等の借方金額(x)から貸方金額(y)を差引いた金額です。

この金額(x-y)は営業収入に属する試算表科目の貸方金額の合計額(e+f+g+h)から借方金額の合計額(i+a+b+c+d)を差引いた金額と一致します。

なぜならx+ i+a+b+c+d=y+ e+f+g+h(=z)を展開すればx-y=(e+f+g+h)-(i+a+b+c+d)だからです。

このように値引きや返品に伴い返金した場合も営業収入の金額を試算表科目の金額から求めることができます。

ここまでの話をまとめたのが図表ハです。

図表ハ

ここで「現預金等」は売上の決済に用いた試算表科目を示します。

具体的には現金預金に加え、仕入代金との相殺に用いた買掛金、振込入金の際に控除された受取人負担の支払手数料、従業員への売上代金を天引きした給料、代物弁済として受け入れた土地・有価証券等が考えられます。

このように決済した際に用いた試算表科目の金額のなかに営業収入の金額がいくら含まれているかはわかりません。

しかし、営業収入に属する試算表科目の貸方の合計額(b+y)から借方の合計額(a)を差し引けば、決済され金額(x1-x2)を求めることができます。

以上説明したようにあるキャッシュフロー科目の金額は当該キャッシュフロー科目に属する試算表を通算してキャッシュフローの金額を算出します。

過大計上または過少計上の損益計算書科目がキャッシュフローに影響を及ぼさない理由

試算表科目のなかでも損益計算書科目(図表イまたはロでは、売上・仮受消費税と貸倒損失)は正確な金額を確定することは困難です。

しかし、決済された金額(①~④から⑫を控除した金額)は正確であり、不確定性をもつ⑤~⑪⑬の金額は営業収入に属する試算表科目の相互間取引であるため(図表ハではaおよびb)、借方金額と貸方金額は相殺され営業収入の金額には影響しません。

営業収入以外のキャッシュフロー科目も算出構造は同様です。


以上見てきたように、試算表からキャッシュフローを作成する方法の骨子は次の三つです。

  1. 現金・預金を除いた試算表科目の金額を借方、貸方別々にキャッシュフロー科目の金額に関連づける
  2. 一つの試算表科目の金額が、複数のキャッシュフロー科目に属する場合は、その試算表科目をキャッシュフロー科目の単位に、補助科目を設け金額を分割する
  3. 一つのキャッシュフロー科目が、複数の試算表科目から構成されている場合は、キャッシュフロー科目を単位に、試算表科目の金額を集計する。

上記の3について一つや二つのCF科目の金額を求めるのであればCF科目に属する試算表科目の金額の貸借の合計差額から求めることは困難ではありません。

しかし全てのCF科目についてCF科目に属する試算表科目の金額の貸借の合計差額から求める方法では多くの時間を要してしまいます。

図表では営業収入に属する試算表科目から営業収入を求める原理を理解してもらうために営業収入に属する試算表科目をまとめて貸方の合計金額から借方の合計金額を差引いて求める原理を説明しました。

これでは点在している科目を現実の試算表から特定し貸借の合計額を求めることは困難です。

そこでその実現方法については「試算表からキャッシュフロー計算書を作成する方法」の「Ⅰ試算表からキャッシュフロー計算書を作成する原理の実現方法」をご覧下さい。

そこでプログラムの説明に先立ちCF科目の金額を求める方法を説明します。

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