直接法による月次のキャッシュフロー計算書を簡単に作り、中小企業の経営に役立てよう

CFSの限界等

キャッシュフロー計算書(CFS)の限界等

このサイトでは、支払能力評価の会計情報として試算表から作成する月次ベースの直接法によるキャッシュフロー計算書を案内しています。そのようなキャッシュフロー計算書には、損益計算書にはない実に多くの長所があります。しかし、留意しなければいけない点もいくつかあります。

その一つが、銀行休業日がキャッシュフロー計算書に及ぼす影響です。

企業間取引等の決済日は5、10(月末)日が多い

企業間での商取引と、その代金決済を考えてみましょう。

通常、商品の仕入れや販売は毎日のように行われています。しかしその代金の決済は、取引の都度は行わないのが慣行となっています。

消費者相手の小売業ではたいていの場合、売上の都度決済に伴い現金等を収入します。しかし、企業間の商取引の代金決済は、毎月一定の日で締め切り、その後の一定の日に決済するという定期払いによる方法が多く行われています。

毎月の決済日は「ごとう日」と称して、5や10の付く日に決済することが多いものです。特に月末に集中します。しかし月末が銀行休業日の場合、決済は行われません。社会保険料の支払いや銀行からの借入金返済などは、月末が銀行休業日の場合、たいていは翌月の銀行営業日の初日に持ち越されます。

銀行休業日がキャッシュフロー計算書に与える影響

月末が銀行休業日の場合、その月の月末には決済がなく、収入も支出も決済されません。その代わり翌月初めの銀行営業日に、前月からの繰越分が決済されます。

このようなケースでは、キャッシュフロー計算書に影響します。特に月末に決済が多い場合には、その影響が顕著に現れます。月末に入金がある会社では、当月末が銀行休業日の場合、当月末の資金残高は、翌月へ持ち越された分だけ少なくなるからです。この場合、当月だけでなく、翌月のキャッシュフローにも影響することになります。

月末が銀行休業日か否かによってキャッシュフロー計算書に影響を与えるケースには、次の4つがあります。

①前月末及び当月末がともに銀行営業日のケース
②前月末は銀行休業日で、当月末は銀行営業日のケース
③前月末は銀行営業日で、当月末は銀行休業日のケース
④前月末及び当月末がともに銀行休業日のケース

それぞれのケースにより、当月末の資金残高とキャッシュフローへの影響の現れ方が異なります。これら4つのケースについて一つずつ考えてみましょう。

①前月末及び当月末がともに銀行営業日のケース

前月末が銀行営業日であれば、決済が当月へ持ち越されることはありません。また、当月の月末決済分がその月のうちに決済されるので、残高は本来あるべき残高となります。1か月間のキャッシュフローは予定通りの決済となるため、過不足は生じません。

②前月末は銀行休業日で、当月末は銀行営業日のケース

当月末の残高は正常ですが、前月末が銀行休業日のため、前月の決済分がずれ込んで月初に決済されます。当月のキャッシュフローには当月末の決済分と合わせて2回分の決済が含まれます。

これが営業収入にかかわる収入だとすると、営業収入には2か月分が計上されることになります。

③前月末は銀行営業日で、当月末は銀行休業日のケース

このケースでは、残高とキャッシュフローがともに少なくなります。

前月末は銀行営業日であるため、当月への持ち越しはありません。しかし当月末が銀行休業日なので、当月末の決済分は翌月へ持ち越されます。このため、残高は翌月へずれ込む分だけ本来の分より少なくなります。また、当月のキャッシュフローは月末決済分だけ少なくなります。

④前月末及び当月末がともに銀行休業日のケース

前月末が銀行休業日のため、前月に入金されなかった分は月初にずれ込んで入金されます。当月末も銀行休業日なので、③のケースと同様に残高が少なくなります。

当月末の決済分の入金はないものの、前月分が月初に入金しているため、当月のキャッシュフローは一見正常です。しかし実は1か月分がずれたキャッシュフローとなります。

ここまででお分かりのように、資金残高及び1か月間のキャッシュフローが正常なのは、当月末と前月末のいずれもが銀行営業日である①のケースだけです。①以外の3つのケースでは、残高か1か月間のキャッシュフローが変則的になります。

平成25年で前月末と当月末の両方が銀行営業日に当たる月は2月、4月、5月、7月、10月の5か月だけです。つまり平成25年では、正常な月は5か月だけで、残りの7か月は残高かキャッシュフローのいずれか、または両方が正常ではないことになります。

月次でのキャッシュフロー計算書により適切なキャッシュフロー情報を提供するという点から考えると、これでは困ることになります。

銀行休業日の影響を軽減する方法

そこで月末が銀行休業日の場合は、キャッシュフロー情報への影響を軽減するため、現預金の一つとして「銀行休業日」の科目を設定して対応します。

社会保険料の支払いを例にして考えてみましょう。月末が銀行休業日の場合、当月末には未払を計上するか、あるいは通常月末に行う仕訳を翌月初に行うかのどちらかです。

   当月末日 (借方)社会保険料 (貸方)未払費用
   翌月初日 (借方)未払費用  (貸方)銀行A/C

または

   翌月初日 (借方)社会保険料  (貸方)銀行A/C

という仕訳になります。しかし、どちらの方法を取ったとしても、本来のキャッシュフローは表示されません。

なぜならば当サイトで紹介しているキャッシュフロー計算書の考え方では、現金・預金の借方、貸方の差額をキャッシュフローと定義していますが、上記の処理では当月の現金・預金に影響しないからです。「未払費用」科目は現金・預金として扱われません。

そこで未払費用の代わりに、現金・預金の一つとして「銀行休業日」科目を設定します。先ほどの社会保険料の支払いを、銀行休業日科目を使った仕訳で示すと、次のようになります。

   当月末日 (借方)社会保険料    (貸方)銀行休業日A/C 
   翌月初日 (借方)銀行休業日A/C  (貸方)銀行A/C

「銀行休業日」科目は現金・預金の一つとして設定するため、キャッシュフローに影響を及ぼすことができます。

社会保険料の未払に未払費用科目を設定することは奇異な処理ではなく、特に年度末にはたいていの場合は行われている処理です。しかし、借入金の返済に未払ACを設けることはないでしょう。そこで「銀行休業日」科目を設定することで、銀行休業日の影響による支払の変動の影響を軽減できます。

会社の意思がキャッシュフローに影響を与えることも

銀行休業日がキャッシュフロー計算書に影響を与えることは、取引慣習に起因する一般的なことといえます。それに対し、それぞれの会社固有の都合や意思によって、キャッシュフローが影響を受けることもあります。

受取手形を満期日に決済した場合は、営業収入に表示します。また保有している手形を割引した場合も、営業収入に表示されます。事実に偽りはないものの、もし満期日までに保有していた場合と比較すると、割引の分だけ営業収入が多く表示されることになります。手形を割引するかどうかは、会社の意思によって決まります。

また、定期日に振込払いしていたものを、決済条件を変更して遅らせたり、あるいは手形払いにしたりすれば、仕入支出等の支払は減少します。この結果、キャッシュフローの状況が変化することがあります。この場合も、事実として偽りではありません。支払日の変更は会社の意思によるものでコントロールが可能です。

キャッシュフロー計算書を読み取るとき、これらの例のように会社の都合や意思によってキャッシュフローが変化しうるものだということを知った上で読み取ることが必要になります。

キャッシュフロー計算書は事実だけで構成されているため信頼性のある情報です。しかし、取引慣習や会社の意思によって影響を受けることを認識しておく必要があるのです。

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