CFSには多くの有用性がある
このキャッシュフロー計算書(CFS)普及サイトでは、企業経営者や企業に融資する金融機関に役立つ会計情報として、支払能力評価の会計情報を案内しています。支払能力はCFSによって提供されることからCFSが必要であることを前提に各ページとも構成されています。
当サイトで普及を目指しているCFSは、間接法によるCFSや年次のCFSではなく、月次の直接法によるCFSです。そこで、このページでは月次の直接法によるCFSに、どのような有用性があるのかを説明しましょう。
これまでの研究による特許権取得やプログラム開発、現場での経験等を通じて、CFSには以下のような有用性があることが分かりました。
企業経営者にとっての有用性
企業経営者にとっては、最大の関心事であるキャッシュフロー情報が得られます。
その内容は商取引の決済を表示していることから、金融機関からの借入等に際して経営者自らが説明できます。
また、月次であるため常に2ヶ月前のキャッシュフロー情報を把握することで、タイムリーに対策を講ずることが可能になります。年1回の損益計算書を中心とした損益情報が、平均して7~8ヶ月前であることと比較すると、格段に早く情報を得ることができるといえるでしょう。
月次合計試算表(以下「試算表」という)からCFSを作成できるので、その際に毎月現預金の残高を確かめれば、使い込み等の不正発見に役立つものと思われます。
銀行等の金融機関にとっての有用性
金融機関等にとって、損益情報よりキャッシュフロー情報の方が債務の返済能力の評価に有用であることが明らかになったとされています。
日本では、株式公開会社のCFSは、間接法によるものが圧倒的に多いのですが、オーストラリアでは、直接法しか認められていません。そのオーストラリアで、年次ベースではありますが、直接法のキャッシュフロー情報が、銀行の貸付担当者にとって有効であった旨を紹介した論文があります。
和歌山大学発行「経済理論」325号/2005年5月に掲載された論文で、 執筆者は土田俊也先生です。この論文には概ね次のような研究結果が紹介されています。
まず、破綻企業と非破綻企業、合わせて50社の中から14社をランダムに選び出した。次に、金融機関の融資担当のあるグループの30人には14社のキャッシュフロー情報を与え、他のグループの30人には14社の損益情報を与えた。
その中で、
- 14社の全てについて破綻、非破綻を正確に判断した人数
- 13社について破綻、非破綻を正確に判断した人数
- 12社について破綻、非破綻を正確に判断した人数
の合計は、キャッシュフロー情報を与えられたグループでは、30名中17名だったが、損益情報を与えられたグループでは、30名中2名だった、
とのことです。このことから、キャッシュフロー情報が、債務の返済能力の評価に有用であることが明らかになったと言われています。
このホームページで紹介しているものは月次ベースの直接法によるCFSですから、年次ベースより更に有用性が高いものと思われます。
また融資目的通りに利用されているかを検証することも可能であり、さらに月次であることから、継続して返済財源を生み出せているかどうかのモニタリングも可能です
倒産後再生中の法人にとっての有用性
再生中の法人にとっては、協力を要請した債権者に再建計画時の返済財源を生み出しているか否かの情報を提供できます。また法的な企業再生の場合に、弁護士の方が定期的に裁判所に報告する資料の基礎として有効と考えられます。
作成者にとっての有用性
ここまで書いたことは、利用者にとっての有用性です。しかし、利用者にとっていくら優れた有用性があっても、作成者に負担がかかるようでは現実的ではありません。
このサイトで紹介しているCFSの作成方法は、毎月の合計残高試算表(以下「試算表」)から作成する方法です。
正しい利益が算出できる正確な試算表でなくてもかまいません。現金預金の処理が終了していれば、月次の直接法によるCFSは作成できます。
試算表から直接法によるCFSを作成する技術は、私が平成19年1月19日に、「CFS作成プログラム」(特許第3903317号)として特許を取得していますから理論的なものと思って頂いてよいと思います。
このホームページで紹介している「金流先生」は、この特許の原理を搭載したCFS作成プログラムです。会計事務所が請負っている程度の中小法人では30分程度の短時間で直接法によるCFSを作成することができます。