このサイトでご案内するのは支払能力評価の会計情報です。

その支払能力評価の会計情報は直接法のキャッシュフロー計算書(以下「CFS」)によって得ることができます。

このページでは月次CFSと年計CFSによってどのようにして支払能力評価ができるのかを説明しましょう。

商取引には、発生取引と決済取引とがあります。

発生取引とは、売上や仕入などの取引のことです。発生取引は毎日のように発生します。この発生取引を表示するのが、損益計算書です。

これに対する決済取引は通常、5、10日(ごとうび) に決済されることが多いものです。特に月末は決済が集中します。また給料や仕入代金のような支払等多額な決済取引は、月に数回、特定の日にまとめて行われます。このような特徴を持っている決済取引を表示するのが、キャッシュフロー計算書です。

キャッシュフロー計算書の種類

表示内容による分類

キャッシュフロー計算書には、

  • 直接法によるキャッシュフロー計算書
  • 間接法によるキャッシュフロー計算書

の2種類があります。

【図1】【図2】
(※図をクリックすると拡大します)
【図1】


【図2】

表示期間による分類

上図の直接法と間接法は、内容による分類です。これを次のように、期間によって分類することもできます。

  • 単一期間のキャッシュフロー計算書
  • 月次推移キャッシュフロー計算書
  • 年計推移キャッシュフロー計算書

単一期間のキャッシュフロー計算書とは、通常のキャッシュフロー計算書のことです。単一期間と呼ぶのは、後で述べる他の2つと区別するためで、一つの期間について集計した単表という意味です。先ほどの【図1】や【図2】も、単一期間のキャッシュフロー計算書です。これらについては後ほど詳しく説明します。

三つの資金活動の構造

【図1】と【図2】では、キャッシュフロー計算書には3つの資金活動区分があることが分かります。

次の【図3】と【図4】も、単一期間の直接法と間接法のキャッシュフロー計算書です。ただし【図1】、【図2】のキャッシュフロー計算書より、キャッシュフロー科目が多くなっています。

【図3】

【図3】


【図4】

【図4】


ここでは【図3】の直接法によるキャッシュフロー計算書を用いて、その構造について説明しましょう。

営業活動によるキャッシュフロー

営業活動によるキャッシュフローには、損益計算書の項目に対応する決済項目がキャッシュフロー科目として表示されています。しかし、損益計算書の項目ほど細かくありませんね。

この区分の中程には 「小計」 を表示します。小計より上には、営業収入、材料の仕入支出、外注費支出、人件費支出、賃借料支出、消費税等支払額、その他諸経費支払額、その他の営業収入支出が表示されます。一方、小計より下には、利息及び配当金の受取額、利息の支払額、法人税等の支払額が表示されます。

経営管理や資金調達に用いるキャッシュフロー計算書にも、この区分は有効だと思われます。

投資活動によるキャッシュフロー

この活動区分には、余剰資金の運用及び設備投資の支出、収入が表示されます。余剰資金の運用としては、定期預金等の預入による支出、同払戻による収入、貸付による支出、その回収による収入などがあります。また、設備投資としては、有形固定資産の取得による支出とその売却による収入などがあります。

財務活動によるキャッシュフロー

この資金活動は、先にお金が入るところに特徴があります。ここに表示する項目には、主に借入による収入、その返済による支出などがあります。

3つの資金活動区分の金額の読み方

営業活動によるキャッシュフローの金額の読み方

企業活動は、営業活動によるキャッシュフローを最大にするために行われます。

いくら利益が多くても、営業活動によるキャッシュフローがマイナスだと、やがて倒産する危険性があります。黒字倒産と言われるものです。何ら戦略的な意味もないのにマイナスが続く場合は、早急に抜本的な対策を講じなければなりません。ですから、営業活動によるキャッシュフローは通常はプラスになるべきです。このプラスになった金額から、設備投資の資金に回したり、以前調達した借入金を弁済したりします。

営業キャッシュフローから、営業活動を継続するために必要な設備投資を差引いたものをフリーキャッシュフローといいます。したがって、フリーキャッシュフローがプラスにならないと、継続した事業活動は困難になります。

ただし、 新商品を市場へ投入する初期段階などには、フリーキャッシュフローがマイナスになることも多いものです。そのような段階には、商品の販売が軌道に乗るまでは、財務活動によるキャッシュフロー、つまり借入等で補うことになります。

投資活動によるキャッシュフローの金額の読み方

前にも説明した通り、投資活動には設備投資と余剰資金の運用が含まれています。

設備投資は一般的にはお金が流出し、戻ってくることはあまり期待できません。それに対して、余剰資金の運用は、お金を調節する働きがあります。差し当たり使用する予定のないお金は、利用するまで有利に運用しておきます。

財務活動によるキャッシュフローの金額の読み方

この資金活動は、資金調達と返済を表す活動区分です。

借入れた資金を約定日に返済できなければ、やがて企業は活動を続けられなくなります。そのリスクを負ってまで借入を起こすか、自己の資金の範囲で事業を進めるかを決める必要があります。

この資金活動には、しっかりとした経営方針が最も求められます。

キャッシュフロー計算書の作成原理を具体化するための方法

キャッシュフロー計算書の集計過程

単一期間のキャッシュフロー計算書を読むと、三つの資金活動ごとに区分された内容を把握できます。

キャッシュフロー項目とその金額が信頼できるためには、試算表科目と金額との関係が明らかでなければなりません。そのためにはキャッシュフロー計算書とともに集計過程を示す資料が必要です。その集計過程を示す資料が精算表です。

キャッシュフロー科目とキャッシュフロー精算表

試算表科目とキャッシュフロー科目との関連を示したのが、【図5】のキャッシュフロー精算表です。
(※図をクリックすると拡大します)

キャッシュフロー精算表

キャッシュフロー精算表によって、キャッシュフロー科目とその金額が導き出された過程が明らかになります。

試算表からキャッシュフロー計算書を作成する原理を具体的に表したのがキャッシュフロー精算表です。

一番上の行では次の項目を表示しています。

  • 財務科目・補助科目
  • CF関連付け(借方CF科目・貸方CF科目)
  • 月次試算表の金額
  • 修正前のキャッシュフローの金額
  • キャッシュフロー修正仕訳
  • 月次キャッシュフロー計算書

これらの項目を順に説明します。

財務科目・補助科目:財務科目とは試算表科目のことです。補助科目は財務科目に複数のキャッシュフロー科目が含まれている場合の内訳科目です。

CF関連付け(借方CF科目・貸方CF科目):説明に用いているキャッシュフロー計算書作成ソフトの「金流先生」では、財務科目ごとの借方・貸方それぞれの金額を、決まったキャッシュフロー科目に集計する方法でキャッシュフロー計算書を作成します。

たとえば、「短期貸付金」という財務科目は、借方は「貸付による支出」に、貸方は「貸付金の回収による収入」というキャッシュフロー科目に集計されるように設定されています。

また、財務科目「売上高」は、借方・貸方ともにキャッシュフロー科目「営業収入」に集計されるように設定されています。

このように設定することを、財務科目のキャッシュフロー科目への「関連付け」と称します。財務科目の補助科目もキャッシュフロー科目と関連付けます。

月次試算表の金額:入力画面から入力した金額を表示します。

修正前のキャッシュフローの金額:財務科目または補助科目ごとに関連付けられたキャッシュフロー科目と金額を表示します。

キャッシュフロー修正仕訳:試算表の金額がキャッシュフローの金額を適切に表していない場合に修正したキャッシュフロー科目と金額を表示します。

月次キャッシュフロー計算書:財務科目・補助科目に対応するキャッシュフロー科目と金額を表示します。名称は月次キャッシュフロー計算書ですが出力帳票としてのキャッシュフロー計算書ではありません。月次キャッシュフロー計算書に集計されるべき金額を表示しているものと考えれば分かりやすいでしょう。例えば受取手形、売掛金、仮受消費税(売上収入)、売上のキャッシュフロー科目は営業収入の金額です。この金額を集計して出力帳票の月次キャッシュフロー計算書として出力します。

推移キャッシュフロー計算書

単一期間のキャッシュフロー計算書はパラパラ漫画の一枚でしかない

しかし、単一期間のキャッシュフロー計算書は、パラパラ漫画の1枚の絵のようなものです。1枚だけではそこに至るまでの経過が分からないため、そこに描かれている状況の意味がよく把握できません。

そこで、状況をつかむためには数ヶ月間のキャッシュフロー計算書を比較する必要があります。

推移キャッシュフロー計算書について

推移キャッシュフロー計算書には、月次推移キャッシュフロー計算書と年計推移キャッシュフロー計算書の2種類があります。

【図6】
【図6】

損益計算書にも、月次推移損益計算書がありますが、月次推移損益計算書では、期首から直近月までの推移を示したものが一般的です。

しかし、直接法のキャッシュフロー計算書は期首から開始しなければならないものではありません。直接法には当期利益の概念がないからです。そこで前年同月を左端に、順次以降の月を表示します。右端は直近の月です。

月次推移キャッシュフロー計算書

【図7】は直接法の月次推移キャッシュフロー計算書です。
(※図をクリックすると拡大します)

【図7】

【図7】

月次推移キャッシュフロー計算書は、1ヶ月ごとのキャッシュフロー計算書を数ヶ月配列しています。数ヶ月配列してあるので、キャッシュフローの推移が一覧できます。並列する月数はいくつか考えられますが、13ヶ月が適当でしょう。

決算後数カ月経過したあとの損益計算書等は、企業の直近の状況を反映したものではありません。

とくに売掛金や買掛金は3カ月もすれば実態が大幅に変わっている可能性があります。

しかし試算表から直接法のキャッシュフロー計算書を月次で作成することにより、企業の直近の資金状況を把握することができます。

さらに、キャッシュフロー計算書を月次推移で表わせば(月次推移キャッシュフロー計算書、図7)、単表より情報量がはるかに多くなることは当然です。

月次推移キャッシュフロー計算書の特長は、

①各月固有のキャッシュフロー情報が得られる

前年同月から当年同月までの13ヶ月を表示することにより、各月固有の情報を得ることができます。例えば、営業活動によるキャッシュフローでは消費税の支出、法人税等の支出、賞与の支給などです。

消費税等の支出は納税額によって支払回数がまちまちです(図7では3ヶ月に1回)。今後の税率アップにより、消費税支出は企業経営にかなりの影響を及ぼします。ところが、消費税の会計処理を税抜き処理している場合、他の財務諸表において消費税に関する情報はわずかしか表示されません。未払額または還付金が貸借対照表に計上されるだけです。しかし月次推移キャッシュフロー計算書では支出額が支出時期に応じて明瞭に表示されます。

月次損益計算を正確に行うために、賞与引当金の設定や減価償却費の計上処理が行われています。このため毎月の費用は平準化され、その月本来の営業成績をストレートに読み取ることは難しくなります。

しかし、損益計算書でそれらの処理を施したとしても、キャッシュフローには関係ありません。キャッシュフロー計算書では、収入時には収入情報が、支出時には支出情報が表示されるからです。

②調達と使途の関係がわかる

年1回の情報に比べ、月次推移表では調達と使途の関係がはっきりします。たとえば、図表7では10月から12月に1億円超の設備投資を行っていますが、それを可能としたのが11月の借入れであることが明確に分かります。

③営業キャッシュフローの状況がわかる

企業にとって最も重要な情報は営業活動によるキャッシュフローの増減、多寡です。とくに中小企業を対象とする金融機関は、タイムリーな情報を得ることが大切です。

年計推移キャッシュフロー計算書

月次推移キャッシュフロー計算書は各月固有のキャッシュフロー情報を提供してくれますが、変動の傾向は分かりにくいものです。そこで各月ごとに1年間さかのぼって集計したキャッシュフロー計算書を表示すれば各キャッシュフロー項目の変動をつかむことができます。

【図8】は直接法の年計推移キャッシュフロー計算書です。
(※図をクリックすると拡大します)

【図8】

【図8】

「年計推移」は、著名な経営コンサルタントの一倉定氏が推奨した手法です。一倉氏は売上や原価項目に年計推移を適用しました。

どの月も、その月までの過去12ヶ月のキャッシュフローを合計して、その月の年計額として表示します。それを12ヶ月以上並列します。並列すると、どの月のキャッシュフロー計算書も、過去12ヶ月全ての月の情報を含んでいるため、各月固有の変動要因の影響は表れません。したがって、キャッシュフローの傾向が明確に把握できます。これが、年計推移キャッシュフロー計算書の有用性です。

通常2カ月間同一方向への変動があれば、その傾向は続くものとみてよいとされています。

年計推移キャッシュフロー計算書により、営業活動によるCFがこのまま推移すると何カ月後にゼロになるか、どの項目の影響が大きいか、どのような対策が必要かなどを検討することができます。

これに対し、年1回のキャッシュフロー計算書では変動の状況は1年後にしかわかりません。

その状況を表したのが年計グラフです。

年計グラフ

年計グラフ

通常物事の良くなるには長期間要しますが、悪化する場合は急激です。特に財務基盤の弱い中小・零細ではさらに強い傾向があります。

年1回や2回では情報が遅くなり、対策が手遅れになりかねません。両者の違いは、グラフにすると一層明らかになります。

年計推移キャッシュフロー計算書による状況把握は、企業と金融機関の間の情報共有に役立つものと思われます。損益情報においては売上伝票の計上漏れや、企業の顧客先の都合で未検収であるとか経営者が確かめることが困難な理由を営業部門からあげられると困惑してしまうのではないでしょうか。決済を基礎にする年計推移キャッシュフロー計算書では本当のことが把握できるため企業は金融機関に対して嘘偽りのない情報が提供でき、金融機関は情報を安心して利用できるのではないかと思われます。

企業と金融機関が信頼できる情報を共有することによって納得できる条件が構築できるものと考えられます。以上で、各種のキャッシュフロー計算書の見方を終わります。