このサイトでご案内するのは支払能力評価の会計情報です。支払能力評価の会計情報は企業経営者や企業に融資している金融機関が最も求めている会計情報です。

その会計情報は月次試算表(以下「試算表」)から作成したキャッシュフロー計算書(以下「CFS」)です。

試算表からCFSを現実に作成するには、その原理の実現方法とそれを現実化したプログラムの理解が必要です。以下ではその二つについて説明していきます。

Ⅰ試算表からキャッシュフロー計算書を作成する原理の実現方法

試算表からCFSを作成する原理をまとめると以下の通りです。

  1. 試算表科目とキャッシュフロー科目(以下「CF科目」)を関連付ける
  2. ある試算表科目の金額が、複数のCF科目に属する場合は、その試算表科目をCF科目の単位に、補助科目を設け金額を分割する
  3. あるCF科目が、複数の試算表科目から構成されている場合は、それらの、試算表科目の金額を集計する

以下では後ほど説明するCFS作成ソフト「金流先生」に添ってその実現方法を説明しましょう。金流先生でCFSを作成するには、試算表のデータを入力することが必要です。なお今の段階では「金流先生」についての理解は必要ありません。ここでは試算表からCFSを作成する原理の実現方法について説明しているにすぎません。

1. 試算表科目とCF科目の関連付け

①関連付けの目的

試算表からCFSを作成するためにはまず、試算表科目の金額をCF科目に置換えることで、決済金額を求めます。

そのためには試算表データを入力するに先立って、試算表科目の借方金額及び貸方金額がCF科目では何の金額に属するかを決定しておく必要があります。そこで試算表科目をCF科目に予め関連付けておきます。

②試算表科目は財務会計の科目名を用いる

試算表科目名は財務会計ソフトで用いている科目名を使用します。

③CF科目名

ⅰ財務諸表等規則様式 様式第八号キャッシュ・フロー計算書によれば概ね以下の通りです。
営業活動キャッシュフロー:
営業収入、商品・材料仕入支出、人件費支出、その他営業支出、利息及び配当金の受取額、利息の支払額、法人税等の支払額

投資活動キャッシュフロー:
有価証券の取得による支出、有価証券の売却による収入、有形固定資産の取得による支
出、有形固定資産の売却による収入、貸付による支出、貸付の回収による収入、投資有価
証券の取得による支出、投資有価証券の売却による収入

財務活動キャッシュフロー:
短期借入による収入、短期借入金の返済による支出、長期借入による収入、長期借入金の返済による支出

ⅱⅰにおいて中小企業ではめったにない社債の発行による収入等は掲げていません。
ⅲⅰにおいて掲げていないCF項目で次の項目は設定した方がよいと思われます。
・定期預金等の預入による支出、定期預金等の払戻しによる収入:定期預金には担保が設定されることがあり常に決済手段として用いられるとは限らないからです。
・消費税の支出、消費税の還付:今後税率のアップにより資金に及ぼす影響が大きくなります。
・社会保険料等支出:今後企業の支出が増えると予想されるため人件費支出とは別建てにすることが望ましいと思われます。
・賃借料支出
・その他の収入支出:その他流動資産、その他流動負債の増減は収入と支出が混在していると思われます。

2.試算表科目に補助科目を設定し金額を分割する

①補助科目の設定

試算表の仮払金や未払金には複数のCF科目に属する金額が含まれている場合があります。

例えば仮払金には諸経費の仮払支出、中間納付した法人税や消費税の仮払処理した金額
が含まれています。

そのような場合は、それらのCF科目である「その他営業支出」「法人税等の支払額」「消費税の支出」を一つの仮払金の金額に関連付けるだけでは実際とは異なった金額が表示されてしまいます。

そこで仮払金に、3つのCF科目を受入れる補助科目を予め設定しておきます。補助科目を単位にCF科目を関連付けます。

補助科目の一つは試算表データを一括して受入れる科目とします。その科目を説明の都合
上「基となる補助科目」と称することとします。

この補助科目は財務科目で用いる人名等の補助科目ではありません。

②補助科目に対応する金額は補助科目データとして入力する

補助科目データは試算表データとは異なる画面で入力します。

補助科目データを入力するのに先立ち試算表データを入力します。

試算表は貸借の合計金額が一致しているはずです。「金流先生」に入力したデータも、貸借が一致していれば、正確な金額が入力されたことがわかります。

このとき、補助科目のある試算表科目であってもそのまま入力します。

その金額は「基となる補助科目」の金額として受入れます。

次に補助科目のデータを入力する画面で「基となる補助科目」以外の補助科目の金額を入力します。他の補助科目の金額を入力することで、「基となる補助科目」の金額は同額減少するようにプログラムしてあります。

先ほどの仮払金を例に説明しましょう。

仮払金の補助科目には「その他営業支出」「法人税等の支払額」「消費税の支出」の3つがあるとします。

基となる補助科目として「その他営業支出」を用いるとします。

「法人税等の支払額」「消費税の支出」の入力がなければ試算表のデータがそのまま「その他営業支出」の金額となります。「法人税等の支払額」または「消費税の支出」の入力があれば「その他営業支出」の金額は同額減少します。

このようにして補助科目の金額を入力しても試算表から入力した金額は維持されています。

3.あるCF科目が、複数の試算表科目から構成されている場合は、それらの、試算表科目の金額を集計する

三つ目の「あるCF科目が、複数の試算表科目から構成されている場合は、CF科目を単位として、試算表科目の金額を集計する」はCFSの作成原理のページで営業収入を例に説明しました。

これを具体的にどのようにして金額を集計するかはイメージがわきにくにと思います。

そこで具体的にどのように集計するかを説明しましょう。
図表イ

営業収入に属する試算表科目の増加項目である貸方の合計額(e+f+g+h)から減少項目である借方の合計額(i+a+b+c+d)を差引いた金額が営業収入の金額です。

一つや二つのCF科目の金額を求めるのであればCF科目に属する試算表科目の金額の貸借の合計差額から求めることは困難ではありません。

しかし全てのCF科目についてCF科目に属する試算表科目の金額の貸借の合計差額から求める方法では多くの時間を要してしまいます。

そこでプログラムの説明に先立ちCF科目の金額を求める方法を説明しておきます。

CFSの作成原理のページでは、図表イを用いて営業収入に属する試算表科目について、貸方の合計金額から借方の合計金額を差引いて営業収入の金額を求めることを説明しました。

しかし、点在している科目を現実の試算表から特定し貸借の合計額を求めることは困難です。

そこで先ず個々の試算表科目に関連付けたCF科目の貸借差額を求め、次に貸借差額を合計します。このようにすることで同一の結果が得られます。

図表ロ

図表ロは営業収入に属する試算表科目が試算表上で点在している状態を示しています。

それらの試算表科目の貸方から借方を差引いた金額を求めます。

例えば売掛金は貸方金額fから借方金額aを差引きます。

受取手形以下の科目も同様にして営業収入の金額を求めます。

これらの試算表科目に応じたCF科目を集計して、当月のCF科目の金額を求めます。

試算表からのキャッシュフロー計算書作成手順

キャッシュフロー計算書作成ソフト「金流先生」

この項では、会計事務所向けに開発したキャッシュフロー計算書(CFS)作成ソフト「金流先生」を用いて、CFSの作成方法を説明します。

「金流先生」の特長

簡単

「金流先生」は、月次試算表の金額を入力するだけで、素早くCFSを作成できます。

単月・月次推移・年計推移で出力

「金流先生」では、単月・月次推移・年計推移の3種類の期間のCFSを出力できます。

管理資料は一般的に、比較することでよりよく役に立ちます。CFSも、単月で見るよりも推移表で検討するほうが役に立ちます。推移表なら、時間の経過に伴う傾向や変化が分かるからです。

なお表示金額は、円・千円・百万円と切り替えることができます。

直接法・間接法の両方に対応

「金流先生」は、直接法・間接法のどちらのCFSも作成できます。試算表のデータを一度入力すれば、直接法・間接法の両方が出力できます。

試算表からキャッシュフロー計算書が作成できる

本格的な直接法によるCFSは、これまで仕訳データからしか作成できないと考えられていました。しかし「金流先生」により、試算表データから直接法のCFSが簡単に作成できるようになりました。試算表科目とキャッシュフロー科目(以下「CF科目」)とを関連付ける技法が開発できたからです。

複数の会社のキャッシュフロー計算書を作成できる

「金流先生」は会計事務所用として開発されていますので、複数の会社のCFSが作成できます。

「金流先生」の操作の概要

まずは「金流先生」の操作の概要を紹介しましょう。

最初に、CFSを作成する会社を登録します。これは、コード番号、会社名などを入力するだけです。説明するほどのこともありませんので、細かい説明は省略します。

会社を登録した後の作業は、登録処理と、月次処理の2つに大別できます。

登録処理

まず登録処理を説明します。この登録処理は最も重要なステップです。しかし、理解しながら作業を進めれば難しくはありません。

ステップ1 キャッシュフロー科目名を登録します。

CF科目名は、キャッシュフロー計算書にそのまま表示されます。

ステップ2  試算表科目名を登録します。

CFSのデータとして、財務会計の試算表データを用いますが、そのために試算表科目名を登録します。ただし、財務会計システムの科目名称と「金流先生」の科目名称は異なってもかまいません。

ステップ3 関連付けの登録を行います。

ステップ2で行った試算表科目名の金額が、ステップ1で行ったCF科目名の金額に集計されるようにするために、関連付けの登録を行います。

試算表からCFSを作成するシステムの中で、最も重要なものは、この関連付けのメカニズムです。十分に理解した上で作業してください。なぜなら試算表科目の金額がCF科目の金額にどのように反映されるかが理解できないと、完全なCFSにならないからです。

しかし、関連付けを一から設定していく必要はありません。「金流先生」付属のひな形には、標準的な科目体系と関連付けが、あらかじめ設定してあります。このひな形を利用すれば、関連付けに困ることはないでしょう。あとは、会社固有の関連付けがある場合に、その部分を直せばよいだけです。

月次試算表データの入力

登録処理が完了したら、次は月次処理に移ります。月次処理では、まず開始年月を決めます。その後、月次試算表の金額、補助科目の金額の順に入力していきます。

なお、試算表や補助科目の金額を入力しただけでは正確なCFSが作成できない場合は、修正仕訳を入力します。

キャッシュフロー計算書の出力

月次の試算表データの入力が完了したら、必要なCFSを出力します。CFSには単一期間のCFSと一定期間の推移で表示する「推移キャッシュフロー計算書」とがあります。

以上が金流先生の概要です。

金流先生の画面

ここからは、実際の金流先生の画面を用いて、CFSの作成方法を説明しましょう。

【財務科目関連付け変更】
【図1】
(※図をクリックすると拡大します)
財務科目関連付け変更【図1】

図1は【財務科目関連付け変更】の画面です。

すでにご説明したように、試算表から素早くCFSを作成する機能は、「金流先生」の大きな特徴の一つです。

そのための重要な仕組みが「関連付け」です。

「関連付け」により、CFSを自動的に作成することができます。関連付けとは、試算表科目の借方・貸方をCF科目に置き換える前準備のことです。置き換えることで、借方・貸方それぞれの金額をどのCF科目に集計させるかが定義付けられます。

なお、この【財務科目関連付け変更】の画面では、直接法と間接法の両方を一度に登録できます。また、最初に会社を登録する際にも、すべてを手入力する必要はありません。各種の関連付けや、その他の科目体系は、ひな形とは異なるものだけを修正すればよいので、簡単に登録できます。

この画面の名称が「財務科目関連付け登録」ではなく、「財務科目関連付け変更」となっているのは、「登録」の段階は最初から済んでいるからです。

【補助科目関連付け変更】
【図2】
(※図をクリックすると拡大します)
補助科目関連付け変更【図2】

一つの試算表科目を一つのCF科目に置き換えることで、正確なCF科目の金額を求めることができれば、【財務科目関連付け変更】画面での登録だけで完了します。

しかし、仮払金のように、幾つかのCF科目に属する金額が含まれている試算表科目もあります。その場合は、その内訳を、CF科目を単位として区分します。そして区分された金額を、それぞれの属するCF科目に置き換えます。

補助科目関連付けでは、上記のように区分した金額を、試算表科目の補助科目として、CF科目に関連付けます(お分かりかと思いますが、この場合の補助科目は、キャッシュフローに区分するために設けるものです。財務科目で用いる補助科目ではありません。)。この補助科目関連付けもひな形を修正することで簡単に登録できます。

初期の登録処理が終了すれば、月次処理に移ります。月次処理には、入力処理と出力処理とがあります。

【試算表データ入力】
【図3】
(※図をクリックすると拡大します)
試算表データ入力【図3】

入力処理では、最初に試算表データを入力します。入力するのは借方・貸方の金額です。試算表データは、 直接法と間接法に共通ですから、1度入力すればOKです。なお、前月残高や当月残高は、キャッシュフローに関係ありませんから、入力は任意です。ただ、金流先生では入力の検証のために設けています。

借方・貸方金額をキャッシュフローの基礎データとして処理する方式は、「金流先生」に独特の画期的方法です。残高をデータとする、一般のCFSの作成方法とは大きく異なる点です。この方式の考案により、「金流先生」では面倒な精算表を作成する必要はなくなりました。

試算表の借方金額・貸方金額さえ入力すれば、関連付けによって、CFSが自動的に作成されます。試算表金額の入力が正確ならば、当然「借方合計」と「貸方合計」は一致します。一致すれば、当然「差額」はゼロになります。

【補助科目データ入力】
【図4】
(※図をクリックすると拡大します)
補助科目データ入力【図4】

【試算表データ入力】では、補助科目の有無に関係なく、試算表科目の金額を入力します。その段階で、補助科目のある試算表科目では、入力した金額は、補助科目コード「99」を付した補助科目にセットされます(「99」は未分類を表します。)

しかし、【補助科目関連付け変更】の項で説明したように、試算表金額だけでは正確なCFSが作成できない試算表科目があります。

そこで、【補助科目データ入力】の画面で、【補助科目関連付け変更】で登録した補助科目を選択し、その補助科目に対応する金額を入力します。

それぞれの補助科目に金額を入力していくと、「99」を付した補助科目の金額は減少していきます。つまり、補助科目の借方と貸方、それぞれの合計金額は、常に試算表科目の金額と等しく保たれます。

このようにして、試算表の金額を「金流先生」のシステムに取り込みます。
「金流先生」を使用する際に、最も時間を要するのは、補助科目の金額を求めることです。

補助科目の金額は、財務会計の仕訳伝票、会計帳簿等から集計して求めます。この作業は、財務会計システムで、CFS用の補助科目を設定し、その金額が集計できれば、より少ない時間で可能となります。多くの会計事務所が受託している小規模の会社では、慣れれば1社1ヶ月で20~30分もあれば、処理は可能と思われます。

【キャッシュフロー計算書出力】
【図5】
saku-z5.GIF

この画面は、単票のCFSを出力する場合に用います。

単票のCFSの集計期間は、

  • 1ヶ月
  • 3ヶ月
  • 6ヶ月
  • 任意の期間

を選択することができます。

また、金額の表示単位は、

  • 千円
  • 百万円

を選択することができます。

キャッシュフロー計算書の金額の根拠
当月のキャッシュフローの精算表を出力することもできます。精算表の出力単位は、集計期間が1ヶ月、金額単位が円です。

この精算表と、集計期間を1ヶ月、金額単位を円として出力したCFSを照合すれば、出力したCFSの、金額の根拠を確かめることができます。

【月次推移キャッシュフロー計算書出力】
【図6】
saku-z6.GIF

この計算書の表示期間は、

  • 13ヶ月
  • 24ヶ月

です。

また、金額の表示単位は

  • 千円
  • 百万円

の中から選択できます。

キャッシュフローの状況を把握するには、単一期間の帳票では不十分です。しかし、推移表があればキャッシュフローの状況がよく把握できます。

このとき、月次推移CFSであれば、各月のキャッシュフローを比較できます。しかし傾向までは分かりにくいものです。キャッシュフローの傾向を把握するためは、年計推移CFSが必要です。

【年計推移キャッシュフロー計算書出力】
【図7】
saku-z7.GIF

年計推移CFSも、月次推移CFSと同様の表示期間、表示金額が選択できます。

年計推移CFSの各月の金額は、過去1年間の合計を表示しています。つまり、年計推移CFSは各月固有の情報を得るためのものではありません。各月とも過去12ヶ月の全ての月のデータを含んでいますから、全体としての傾向をよく把握できます。

以上が、「金流先生」を用いた試算表からのCFS作成手順です。